ユバスキュラ訪問記
はじめに
今回、サイバーセキュリティの研究活動の絡みで、フィンランドのユバスキュラ大学のサマースクールに参加しました。
2019年11月以来2年半ぶりの海外出張で、もうかなりバタバタしましたが移動の様子を含めて、軽めにまとめておきます。
参加したサマースクールでのメインテーマであるハイブリッド脅威については、別途まとめていますので、ご興味のある方はご笑覧ください。
今回参加したコースは、ユバスキュラ大学の「安全保障と戦略的分析のコース」にある、以下のようなタイトルのプログラムです。
The Landscape of Hybrid Threats: Culture and Changing Nature of War
【抄訳】
ハイブリッド脅威の風景:文化および戦争の本質の変化
対象者は「修士課程学生、博士課程学生、公務員、軍・法執行機関職員」とあるので、専門性の高いものになります。
内容は、以下のような問いを議論するユニークなもので、政治学、ハイブリッド脅威(HT)もしくはハイブリッド戦争(HW)についてのある程度バックグラウンドの知識がないとついていくのは辛い内容と言えます。
【抄訳】
文化がいかに人々の「記憶」を表現するのか、文化の創造性が既存のパラダイムやトレンドと合理的分析を超えて出会うか、また、それがいかに悪用されるか(文化領域の脆弱性)、文化の領域がいかにレジリエンスの一部となるか(HT/HWに対する防御/免疫化の文化と多様性)
参加概要報告
1週間のプログラムで、朝9時から午後4時過ぎまでみっちりと詰まったもので、講義だけでなく、ボードゲームを使ったTTXも2日間丸々使って行いました。
欧州ハイブリッド脅威対策センター(Hybrid CoE)の協力のもとでの開催であったので、講師にはHybrid CoEの方もいました。
特定されない程度に書くと、参加者はEU圏の方たちで、彼らのバックグラウンドは、ポリティカルサイエンス(政治学)がマジョリティのようでした。一部IT系の人もいました。ほぼ、修士課程〜博士学位保持者なので、日本で行われているサマースクールというより、大学院の集中講義に近い印象です。
ボードゲームを使ったTTXでは、チームに分かれて、インフルエンスオペレーションの実践を体験的に学びました。
Malignでは、カードを基づいてナラティブを作成してインフルエンスオペレーションをライバル国に仕掛けます。かなり本格的な作りで、インフルエンスオペレーションについての背景知識がないと何をしているのはわからないと思います。
私には、政治学、安全保障分野の専門性を持つ彼らと卓球のラリーのように議論できる英語力はとてもないので、ボードゲームの際にはかなりの時間は聞き手に回っていましたが、なかなか興味深ったです。
まとめ
やはり現地にいってやりとりしてみると、わかること感じることがたくさんありました。
特に、欧州安全保障のエキスパート予備軍の若者達の考え方やマインドセットを肌で感じられたのはすごく貴重でした。
参加したプログラムは結構よく練られていて、講義+演習の設計や、高等教育のあり方など、大学教員としては、参考になることがありました。一方的な講義だけで難しいことを教えるより、学習効率は良いように思います。
その他の様子もちょっとだけ
離陸直後、224以前のロシア上空経由が予定航路として表示されていて、「え、大丈夫か?」とおもったけど、実際には、ロシア領空を回避して飛んでいました。
感想諸々
フィンランドへの入国には、PCR検査どころか、体温測定すらしませんでした。また、フィンランド内では誰もマスクをしていません。マスクせずにごほごほやっているわけです、もう風邪の一種として受け入れているようですね。ユバスキュラの田舎町でほぼ皆無のアジア人がマスクをしていると怪しまれてしまい、(マスクをつけて歩くのは)逆に怖かったです。
既に知られた話ですが、海外は日本と比べると、(旅行中とはいえ)食費が高いですね。その昔、当時後進国から日本に留学に来ていた若者が日本の食費が高くて、食費を浮かせるために、安いパンを買って凌いでいたのを思い出しましたが、この後、対外的に日本はもっと貧しくなっていくのでしょうか。
欧州の人たちは、この冬のエネルギーのことを気にしてました。長年のエコロジー政策と脱原発政策もあり、安いロシアのガスに依存してしまったわけですが、224以降、状況が変わってしました。原発を再稼働させるのか否か、ガスに頼るのか、代替策がないとのことです。
さて、いろいろとどうするのでしょう。
2022/08/18