サイバーセキュリティ戦略を、2021年版と2018年版で比較した(音読中)

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ご無沙汰しております。

最後に、前回ブログを更新してから、227日が経ちました。

まさに、光陰矢の如しですね。

皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。私は、色々と試みてはいるものの中々形にならず、己の非力さを痛感する日々でございます。

さて、先日(2021/09/28)、サイバーセキュリティ戦略の発表を受け、こちらのような報道がございました。先日の私のツィートです。

(フォロワー絶賛募集中です!)

(たぶん)怒っているようです。

2021年版サイバーセキュリティ戦略(以降、2021版と呼ぶ)は、2018年版(以降、2018版と呼ぶ)と比較して、なにか変わったのでしょうか。

私自身、2021年版を未だ正座して音読中ではありますが、2018年版との比較のために、いくつかのキーワードについて、その増減をカウントしてみました(図1参照)。

土曜の午後に午後ティーを飲みながら「単純に登場回数をカウントしただけ」というお遊びみたいなものですので、マサカリを投げないでくださいね。

よろしくお願い致します。

Naming and shaming

サイバーの国際舞台では、国家支援のサイバー攻撃について攻撃者を「名指しして批判すること」は、長らくしていなかったのですが、こちらのエントリ(沈黙は金?)に示した通り、2016年頃から米国を筆頭に方向転換して、「名指しして批判すること」が増えてきました。

2021版には、次のような数でそれぞれ記載されています。いずれも、2018年版には記載はありませんでした。

  • 中国 13
  • ロシア 6
  • 北朝鮮 7

当然、いずれも、ポジティブな話題での記載ではありません。

「安全保障」へ舵を切ったかな?

その他、関連しそうなキーワードの数をカウントしてみました。

  • 安全保障 38 → 66
  • 軍事 0 → 7
  • 脅威 37 → 49
  • 防御 21 → 36
  • 地政学 0 → 3

我が国のサイバーセキュリティ政策における状況認識も、2021年版では、安全保障的な方向にシフトしているようにも見えます。どうでしょうか。

ちなみに、前回のエントリで取り上げた、「影響(力)工作」についても、2回登場しています。

さらに、防衛省・自衛隊の記述も一気に増えております。

  • 防衛省 9 → 20
  • 自衛隊 3 → 5
  • 防衛省・自衛隊 1 → 3

本文中で「防衛省・自衛隊」で3箇所、脚注に「自衛隊」単体で2箇所登場するなど、自衛隊のみなさまへの期待も高まりそうです。

その一方で、「大学」の記載は大幅にダウンです。調べたキーワードでワースト1位で減っています。大学は、期待されていないのでしょう。なんか、わかります。

エマテクの招くリスク

あ、そうそう、セキュリティ技術の一つである「暗号」の記載も増えていました。これは、「量子」コンピュータの台頭により、既存の「暗号」が破綻するリスクが高まっていることによるものでしょう。

「量子」コンピュータだけでなく、他にも新興技術(エマージングテクノロジー)が招く安全保障上のリスクは色々とありそうです。2021年版では「技術」や「研究」というキーワードも増えていますので、その辺りも、状況認識にはあるのでしょう。

まとめ

「啓発」「強化する」「 推進する」と言ったキーワードも総じて増えているようで、2021年版では、上に記載した方向で、サイバーセキュリティをより一層強化するというところでしょうか。

ちなみに、調べたキーワードで圧倒的に増えたのは、「デジタル」でした。同列にすると他とスケールが合わないので別にしています。今年の流行語大賞間違いなしですね。

再見

2021/10/02

図1 2021年版と2018年版の出現比較 ver.3(太枠内をver.3で追記)

2021/10/03 図1と本文に「地政学」を追加
2021/10/08 図1に太枠の項目を追加

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Takamichi Saito
Takamichi Saito

Written by Takamichi Saito

明治大学理工学部、博士(工学)、明治大学サイバーセキュリティ研究所所長。専門は、ブラウザーフィンガープリント技術、サイバーアトリビューション技術、サイバーセキュリティ全般。人工知能技術の実践活用。著書:マスタリングTCP/IP情報セキュリティ編(第二版)、監訳:プロフェッショナルSSL/TLS