Amazon AI関連サービス小まとめ:2020
背景
Amazon社は、2006年よりAmazon Elastic Compute Cloud (EC2) として、「クラウド」コンピューティングの提供を開始したわけですが、、従来型のサービスをCloud1.0と呼ぶとするのであれば、2020年の現在では、Cloud2.0と呼ばれる次世代型クラウドサービスを様々提供しております。以前、紹介したものは、どちらかと言うとサーバシステム環境構築やシステム運用系の技術で、その代表例である「サーバレス」や「マイクロサービス」などは、だいぶ知られた概念になってきたようですね。
今回は、AI技術提供のクラウドサービスの紹介です。
ちなみに、AI技術のクラウドでの提供という流れは、Amazon社だけでなく、マイクロソフト社、Google社と言ったCSP(Cloud Service Provider)でも同様なサービスは提供しております。
2020年現在、Amazon社のAIサービスを活用して、一般的なCSC(Cloud Service Customer:クラウドサービス利用者)事業者は、「自社独自のAIサービス」をCSPとして顧客に提供できる時代と言えるかも、、しれません。
AWSのAI サービスラインナップ
まず、最初に「AI サービス」と呼ばれるサービスの一部を、こちらなど参考に列挙します。一部、利用者を制限?しているサービスもあるようです。
これらは、完全マネージド型のサービス、つまり、サーバの管理が不要、機械学習モデルの作成、デプロイが不要で、Web UIやWeb API経由で利用可能な優れものサービスです。
- Amazon Rekognition:イメージやビデオから、人物、テキスト、シーン、アクティビティを識別できるAPIサービス
- Amazon Polly : テキストをリアルな音声に変換するAPIサービス。標準で29言語に対し59種の音声に対応
- Amazon Transcribe : 自動音声認識サービス。音声をテキストに自動的に変換。業界特有の単語や社内用語などを判別できない場合、カスタム語彙として登録して認識可能
- Amazon Comprehend : テキスト内でのインサイトや関係性を検出できる。文章を理解する上で重要なキーフレーズ、感情などを検出するサービス。使用例として、ホテルでの接客内容の分析
- Amazon Translate : 自然で正確な言語翻訳。日本語を含む50以上の言語間で翻訳が可能
- Amazon Textract:スキャンした文書などの非構造化データからテキストや構造化データを抽出
- Amazon Kendra:企業向け検索サービス。検索に自然言語を用いることができる。ユーザの役に立った検索結果を学習するので、検索結果の内容が時間とともに向上する
- Amazon Lex:アプリケーションに対話型インターフェースを構築するサービス 。Alexa と同等技術を採用。チャットボットなどを実装可能
- Amazon Forecast:(下で紹介)
- Amazon Personalize:(下で紹介)
Amazon Forecast
Amazon Forecastは、付加的なデータを結び付けた時系列予測(過去のデータから、その後のデータ動向を予測)機能を提供するサービスです。
様々な分野で時系列予測の課題を扱っているAmazon社の技術であり十分な実績があるので、信頼性は高そうです。
利用可能アルゴリズム
・ARIMA
・ETS
・NPTS
・Prophet
・DeepAR+
(※DeepAR+とは、再帰型ニューラルネットワーク (RNN) を使用した,時系列予測の教師ありアルゴリズム。データセットに含まれる特徴が多いと、他のアルゴリズムより優れた精度が見込める。)
上記のアルゴリズムの中で最適なアルゴリズムを自動的に選択してくれるAutoMLも利用可能(ただし、AutoMLの利用は処理時間が掛かる)です。
こちらの資料にも詳しい説明がありました。
研究室の神君に、どこぞのブログを参考に自動車の月別売上数のデータセットを使って、Amazon Forecastのデモをしてもらいました。
デモした神君曰く、時系列予測の知識は使わずに、予測結果を得られたとのことでした。
Amazon Personalize
推薦機能を簡単に実現できるAIサービスです。Amazonでよくある過去の閲覧履歴・購入履歴からおススメを推論してくれるサービスを自分たちで作れるサービスです。
主な機能として、レシピを指定することにより、ユーザごとにパーソナライズされた推薦リストを提供、類似アイテムのリストを提供、アイテムのリストをユーザの嗜好に合わせて並び替えし提供することが可能です。
こちらのページにはもう少し詳しく説明があります。
研究室の藤井君に、MovieLens という映画視聴履歴データを用いて、ユーザごとのおすすめ映画一覧を作成するというデモをしてもらいました。
デモした藤井君曰く、レコメンデーションの知識は全く不要だったとのことです。Amazon Personalize を使えば、 専門知識がなくても、レコメンデーションサービスが作れるということですね。
Amazon SageMaker
こちらは、上で説明したお手軽に使える「AI サービス」とは別で、「MLサービス」と呼ばれるものです。自分たちで推論モデルを作成し、処理速度や精度のチューニングなどAI開発をするエンジニア向けのインフラサービスです。
機械学習システムを開発する際の課題、たとえば、環境構築、学習時の並列・分散化で実行、ハイパーパラメータのチューニングや、推論用の API サーバ構築、バッチ推論の仕組みの構築などを自動化などで解消してくれる環境が提供されています。
- サポートされるアルゴリズム(一例)
・Linear Learner
・Seq2seq
・K-means
・K-NN
・Random Cut Forest - サポートされるフレームワーク(一例)
・Tensorflow
・Chainer
・PyTorch
・MXNet
・Scikit-learn
まとめ
今回のAmazonのサービスを紹介しておきながら、、、
我々の研究室では、研究室内にサーバルームを設置して、GPUマシンを買い込んでおります。
しかし、我々の研究室ではやりたいことがたくさんあり、狭いサーバルームのサーバだけでは全くリソースが足りておりません。
また、同じやり方に固執しているとすぐに時代遅れになりますので、常に新しいアプローチを模索する必要があると考えております。
今回はその一環での調査でした。まだ使いこなせてはいませんが、感触・感想としては、、、
AWSの「AIサービス」「MLサービス」、すごくすごいです。
ターゲットによっては、自分たちで環境を用意して、モデルを作り、提供環境を構築するより圧倒的に良さそうです。
時代の流れは早すぎます。
彼の国でも「AI教育大事」の声も聞こえますが、そもそも前提として、「AI教育」、何を前提としてどこからスタートし何を目指すのかは、よーく考えた方が良さそうです。まぁ、ただ、日本全体ではもっと根源的なところから頑張らないといけないかもしれませんが。
エピソード;
先日、研究室方面で、SageMakerを2週間くらいがっつり使ったら・・・すごい額の利用料金となりました。
貧乏な研究組織を運営している私はビビましたが、
AWSサービス利用の様子はモニタされているのか、AWS技術系営業さんから速攻で電話が掛かってきて、色々と相談に乗ってもらえました。
そのやりとりの中で、我々の取り組みについて結構説明いたしました。
その結果、研究開発資金として、利用料の一部をディスカウントする形で開発費のご提供(今回は「特別な対応」であること記載することを前提にこのようにブログで公開して良いとの承諾も頂いております)を頂けました!
とっても、ありがたい!
Amazon最高! 生活必需品全てAmazonで買います!!
私の研究室からもAmazon社で活躍できる人材を育てます!
(最近、一人技術職で入社しています)
謝辞
- Amazon社に感謝します
- こちらの記事を書くにあたって、以下の方々の資料などを参考しました。感謝致します:
・下山さん
・石橋空樹君
・神 章洋 君
・田口友瑛 君
・田畑唯斗 君
・笠井遥輝 君
・藤井達也 君
・柴田 怜 君
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